法人保有の仮想通貨に係る時価評価の取扱い

 

〔現行の法人税法上の取扱い〕
2017年は仮想通貨元年といわれ,個人のみならず法人が仮想通貨を保有するケースも急増している。
実務では期末時点で保有する仮想通貨について、売買目的有価証券などと同様に税務上時価評価損益を認識する必要があるのか疑問を抱く向きが多数みられているが
現行の法人税法上、期末時点で時価評価はしないこととなっている。

 

 


〔仮想通貨の私法上の位置づけ〕
企業会計基準委員会(ASBJ)は平成29年12月6日に公表した
「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」で、
仮想通貨は現時点において私法上の位置づけが明確ではなく法律上の権利に該当するかどうかは明らかではないが、
売買・換金を通じて資金の獲得に貢献する場合も考えられることから、
「会計上の資産として取り扱い得る」としている。

仮想通貨を会計上の資産として取り扱うものとしたうえで、
既存の外国通貨・金融資産(仮想通貨は有価証券などの金融資産に類似した性格を有するため)・棚卸資産(仮想通貨は金地金に類似した性格も有しているため)・無形固定資産それぞれの会計基準に照らし検討したところ、
いずれの会計基準も適当ではないと整理されたため仮想通貨独自の新たな会計処理を定めている。
主なポイントは以下のとおり。

○期末における仮想通貨の評価に関する会計処理
・仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は保有する仮想通貨について活発な市場が存在する場合、
市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する。

・活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。
期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む)が取得原価を下回る場合には当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、
取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理する。

・前期以前において上記に基づいて仮想通貨の取得原価と処分見込価額との差額を損失として処理した場合、
当該損失処理額について当期に戻入れを行わない。

※活発な市場が存在する場合とは継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいう。

○適用時期
平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用。
ただし本実務対応報告の公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる。

※本取扱いは本年2月6日まで意見募集が行われた。3月中に最終基準化される見通しです。

 


〔仮想通貨の法人税法上の位置づけ〕
法人税法では,短期売買商品(法法61)や売買目的有価証券(法法61の3)などの資産について、
期末時点で時価評価し評価損益を認識するとしている。
時価評価が要される資産は法令上で限定列挙されており、仮想通貨はこれに当たらない。
したがって価格の変動等を利用して利益を得るなど投機目的で仮想通貨を保有している場合であっても、税務上は期末に時価評価せず含み損益も認識しない。

この点、先述した会計基準に則り、期末に市場価格に基づく価額をもって仮想通貨の貸借対照表価額とし帳簿価額との差額を当期の損益として計上した場合には、
法人税の所得計算上、評価損益について申告調整で自己否認をすることになる。


〔まとめ〕
・仮想通貨の期末評価として私法(民法・商法)上は期末に時価評価を行う。

・一方、法人税法上は会計上期末評価をして評価損益を計上しても税法上で申告調整を行いその評価損益について自己否認することとなっている。


〔ちなみに〕
例えば会社が投資目的で株式投資を行い、期末時点において50%以上の評価増減が見込まれる場合には
時価評価を行いその評価損益を計上することができるとされています。
仮想通貨も性質的にはこれに似ている部分がありますが現行では評価損益を組み込むことはできないようです。
と思ったらこの1か月後に仮想通貨の時価評価について続報が出たようです。
それぐらい今、税法上でも仮想通貨はアツいトピックスです。
続報についてはまたまとめます。