グルメぶっている奴は大体信用ならない

会社の後輩の岡林は静岡県出身で毎年、地元からティーパックに入った新茶を送ってもらっているそうだ。

値段は20パックで1,080円らしい。

最近寒くなってきたので、持参している水筒にティーパックを入れてお湯を注いで飲んでいる。

 

一方、私はコンビニに売っている20パック258円のお茶を買って、岡林と同じように持参した水筒に入れて飲んでいる。

ある時、岡林が私のお茶がコンビニのティーパックのお茶だということを知り、飲んでみたいと言った。

岡林いわく「俺、静岡のお茶以外飲んだことないんすよ」とのことだ。

 

私のお茶を飲み終わるや否や

「あーやっぱ香りが足りないですね、安っぽい感じがします。静岡のお茶に慣れてるから俺、他のお茶は受け付けない体になってるのかもしれないっすね」

と言っていた。

岡林を頭から茶畑にぶち込む想像をして、このやり場のない怒りをこらえた。

 

後日、岡林がいつもと同じように静岡のお茶を水筒に入れて飲んでいた。

岡林が席を外した隙に水筒の中身を静岡のお茶からコンビニのティーパックのお茶に入れ替えた。

 

あれだけ「香りが~」と言っていたので流石に一口で気付くかと思ったが、どれだけ飲んでも気付く様子はない。

それどころか私に対して「やっぱ静岡のお茶ですよ、安っぽいお茶飲んでたら安っぽい男になっちまいますよ」とまで言ってくる始末。

ここまでくると怒りすら感じず、むしろ不安になってしまう。

なんだかとんでもないことをしているんじゃないかと思ってしまう。

岡林のプライドの拠り所である「お茶が分かる男」というアイデンティティーを私が奪ってしまうんじゃないか。

 

一人でハラハラして岡林の水筒をチラチラ見てしまう。

視線に気づいた岡林は水筒をフリフリと振って見せてドヤ顔で水筒の中身を勢いよく飲む。

岡林。違うんだ、そうじゃない。私が言いたいのはそういうことじゃない。

早く席を立つんだ岡林。私が全て元通りにするから。私たちはそこからまた始めた方がいい。

それだけガブガブとお茶を飲んでいるのになぜ一向に席を立たないんだ岡林。

 

その後どうにか岡林にバレることなくお茶を元通りにした。

静岡→コンビニ→静岡

と飲み比べをした岡林だったが、結局気付くことはなかった。

 

自称グルメに関わって、いい事なんて何もない。

ちなみにこの記事の中で出てきた岡林の数は15回