欠損金の繰越控除と新設法人

【欠損金の繰越控除について】
欠損金の繰越控除とは,青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金を,翌事業年度以降に繰り越し,各事業年度の所得金額に一定の割合を乗じた金額を損金算入できるというもの( 法法57 )。
中小法人等以外の法人(資本金1億円超の法人)については,27年4月1日以後の事業年度開始の日に応じて,所得金額の50%から65%までの控除制限が設けられている。
平成28年4月1日から29年3月31日までに開始する事業年度は所得金額の60%までしか控除できない。

一方中小法人(資本金1億円以下の法人)等については,所得金額の全額を上限に損金算入でき,
27年度改正では,新設法人についても,設立の日から7年を経過する日までの期間内に属する事業年度においては,中小法人等と同様に所得金額の全額が控除限度額となった( 法法57 ⑪三)。
新設法人に対する特例については,資本金基準が設けられていないため,大法人でも適用可能だ。

 

 

 

【新設法人とは】
新設法人は,中小法人等以外の法人(資本金1億円超の法人)のうち,資本金5億円以上の大法人の100%子法人等でない法人が該当する( 法法66 ⑥)。

例えば,資本金10億円の大法人に完全支配されている新設法人については,上記要件に該当してしまうため,新設法人の特例対象にはならない。

一方で,例えば資本金3億円の法人に完全支配されている新設法人については,大法人による完全支配関係はなく,その新設法人の資本金が5億円超や10億円超の大法人であっても,新設法人の特例に資本金基準がないため,特例対象となる。
ただし,仮に新設法人の経営が短期間で軌道に乗ったことで株式上場した場合には,設立から7年以内であっても,上場日以後に終了する事業年度では新設法人の特例は適用できず,控除制限が適用される。