法人保有の仮想通貨に係る時価評価の取扱いの続報

 

〔法人所有の仮想通貨の取扱い続報〕
前回の記事で言及した一般事業会社が保有する仮想通貨はたとえ投機目的で保有している場合であっても
法人税法における要件に該当しない限り、短期売買商品には当たらない。
ただし法人が自ら短期売買目的で取得したものである旨をその取得日に帳簿書類に区分記載した場合や、
専門部署を設けてトレーディング目的で商品の売買を行う場合には該当する余地がある。
そこで、この短期売買商品について確認する。

 

 


〔短期売買商品とは〕
法人税法における短期売買商品とは法人が短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産(有価証券を除く)をいい、
①専担者売買商品や②帳簿記載短期売買商品といった類型がある(法法61、法令118の4、法規27の6)。

①専担者売買商品とは
金、銀、白金その他の資産のうち市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行ったもの。

②帳簿記載短期売買商品とは
金,銀,白金その他の資産のうちその取得の日において短期売買目的で取得したものである旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもの。

専担者売買商品とはいわゆるトレーディング目的で取得した商品について、
法人がトレーディング業務を日常的に遂行し得る人材によって構成された独立の専門部署(関係会社を含む。)を設け、
このような専門部署により売買されたものをいう。
単に短期的な売買利益の稼得を目的とした取引を行っているということ、
あるいはこのような取引を行うことを兼務する担当者が取引を行っているといったことのみでは専担者売買商品には当たらない(法基通2-3-63)。
現在のところ、仮想通貨に関してトレーディング業務を行う専門部署を設けている法人の例は把握されていない。

また帳簿記載短期売買商品とは法令の規定に基づいて所定の記載を行っているものをいい、
法人が資産を取得するに当たって、その取得の日に法人自らが資産の取得に関する帳簿書類において、
短期売買目的で取得した資産の勘定科目をその目的以外の目的で取得した資産の勘定科目と区分することにより記載が行われていることが必要。
そのため法人が短期的に売買し、又は大量に売買を行っている仮想通貨であっても、このような法令の規定に基づいて区分していないものは帳簿記載短期売買商品に該当しない(法基通2-3-64)。

 


〔帳簿記載短期売買商品の要件〕
以上のような点を踏まえると、一般事業会社が購入・保有している仮想通貨について、
その取得した時点において短期売買目的で取得したことを帳簿書類に明示していなければ、短期売買商品には該当しないこととなる。
さらに法人が保有していた仮想通貨について、その取得後に大幅な値上がり・値下がりがあったからといって、後日、短期売買商品に振り替えるといった処理はできないため注意が必要である。

なお仮想通貨は日本円やドルなどのように国がその価値を保証している法定通貨ではなく、
資産の裏付けがないことから、その価格が急落して損をする可能性も十分に予想される。
金融庁消費者庁警察庁では仮想通貨に関するトラブルへの注意喚起も行っており、その取引に当たってはくれぐれも注意が必要となっている。

 


〔まとめ〕
・法人の所有する仮想通貨も期末の評価替えが認められる余地が出てきた。

・要件として仮想通貨の短期取引を目的とした部門や関連会社が対象となっているためかなり限定的である。

・今までは仮想通貨取引を主とした部門や会社は確認されていなかったが、今後、仮想通貨がもっと盛んになれば事例も出てくると思われる。


〔ちなみに〕
仮想通貨に関してトレーディング業務を行う専門部署を設けている法人の例は把握されていないって書きましたけど、
この検討が発表される以前にそういう部署や会社はあって、仮想通貨の評価替えをやってる所はあると思います。
把握されてないっていうのは調査等で税務署が確認できていないか、それか評価替えによる評価損益を確認したけど法律が追い付いていないから保留になったとかだと思います。
それはさておき、これが認められるようになれば、評価損益により赤字補てんとか黒字にぶつけて法人税の節税とかの未来が見えてきますね。
この材料が仮想通貨を所有するインセンティブになればうれしいですね。まあ何年も先になるでしょうが。