工業会の証明書と資産区分

〔生産性向上設備に必要な工業会証明書〕
中小企業経営強化税制( 措法42の12の4 )のA類型(生産性向上設備)には,「販売開始時期要件」と「生産性向上要件」が設けられており,この要件に該当するか否かについて,工業会等が「証明書」を発行している。
この「証明書」は,工業会等が任意に発行しているものだが,同制度の適用を受けられる設備かどうかの参考となるため,その写しを申告時に添付することとされている。

ところで,この「証明書」には設備の資産区分(減価償却資産の種類)も記載されているが,同税制を適用する事業者における実際の資産区分とは異なるケースもあるようだ。
というのも,「証明書」は,その事業者の資産区分が正しいことについてまで“お墨付き”を与えるものではないからだ。
「証明書」における資産区分は,原則,事業者からの意向に従ってメーカー等が申告したものであり,工業会等は,この資産区分を前提とした場合に,上記2要件を満たすか否かを判断しているにすぎない。

 

 

 

〔工業会と税制上の資産区分の違いによる適用要件の可否〕
気を付けたいのが,同一の設備であっても,用途等により資産区分が異なるケースだ。
例えば,ドローンの資産区分は,規模,構造,用途により異なり,

農業用ドローンであれば「機械装置」,

撮影用ドローンであれば「器具備品」になることが考えられる。

この場合,仮に,「機械装置」であれば「販売開始時期要件」は10年以内だが,「器具備品」であれば6年以内だ。
このため,その設備の販売開始年度によっては同要件を満たさない可能性もある。

 

 

〔資産区分による取得価額要件の可否〕
同税制を適用するためには,当然ながら税法上の要件を満たすことも必要だが,
取得価額要件については,

「機械装置」であれば160万円以上,

「器具備品」であれば30万円以上
と資産区分によって満たすべき金額が異なる。
申告に当たっては,資産区分が間違っていないかどうか,納税者側で再確認しておくべきだろう。

 

 

〔まとめ〕

・生産性向上設備適用に必要な工業会証明書に記載の資産区分は税法上の資産区分と異なる可能性がある。

・用途により資産区分が変わるものは資産区分による適用要件の違いにも注意が必要

 


〔ちなみに〕
生産性向上設備を投資すれば節税できますよと経営者の方にこの優遇税制が施行された時からアナウンスを行ってきた。
工業会の証明書が必要とか会社側が手続きしなきゃいけない事があり、それで渋る事があったが
これも今(平成30年5月30日時点)申込期間のIT導入補助金の申請を行う事によりベンダー側が主に行ってくれる場合がある。
ただ補助金と優遇税制の併用には一部制限がかかっているため補助事業内容の確認は必要です。
これだけ導入側にお膳立てがあるのにもかかわらず、僕の担当ではいまだに一件もこの税制を行った方はいません。
経営者の高齢化と事業承継の問題があるため、今の段階で高額の設備投資に踏み切れないんでしょう。後はお金の問題もありますが。
中小企業は中々厳しいですね。