動画の制作費用と広告宣伝費

【企業戦略としての動画制作の一般化】
新商品発表会で上映する商品PR動画など,企業が自社オリジナルの「動画」を制作することは,今や珍しい取組ではない。
最近では,株主総会での事業報告を動画で行うことも多い。

 【動画制作の税務上の取扱い】
税務上,商品PR等を目的とした動画の制作費用は,広告宣伝費としての処理が認められる。
動画の制作費用は,一見,耐用年数省令に掲げられている器具備品の「映画フィルム・磁気テープ・レコード(耐用年数2年)」に該当しそうなものである。
とはいえ,動画と映画フィルム等は,そもそも無形・有形という点で異なるため,動画の制作費用を器具備品として資産計上する必要はない。
また,一般的な動画であれば,プログラミングも施されていないため,「ソフトウエア」として,5年均等償却することも不要だ。

この点,制作した動画の使用期間が1年以上に及ぶのであれば,「繰延資産」への該当性も気になるところである。
しかし,「繰延資産」に該当する費用は,政令で限定列挙されており,動画の制作費用は,そのいずれにも該当しないことになる( 法法2 二十四, 法令14 ①)。

【具体的な取り扱い】
そのため,動画の制作費用は,社歌やコマーシャルソング等の制作費用と同様に( 法基通7-1-10 ),
広告宣伝費として一括損金となることが一般的と考えられる。

ただし,その動画を複数年にわたり使用する場合には,その使用期間,つまり,「その効果の及ぶ期間」で費用処理することが望ましいだろう。
広告宣伝費の処理について,国税庁の文書回答事例でも,“広告宣伝期間を基礎として期間配分し,それぞれの期間の属する事業年度に損金算入する”旨が示されている(国税庁HP:『「山の日記念全国大会in鳥取」において協賛企業が支出する費用の税務上の取扱いについて』等)。