私はディズニーは好きだが、ディズニーに対する温度差に鈍感な人は嫌いだ

先日、友人の結婚式に出席するためにハワイに行ってきた。

航空券代から宿泊費までその友人が払うと言っていたのだが、流石にそこまで甘えるわけにはいかない。

なによりこれから先、なにかと要り様になるだろう。

そう思って「航空券から宿泊費はこっちが持つ、その代わり祝儀は無し」

友人と話し合ってそう決めた。

他の招待されている友人達も同じように考えていたらしい。

むしろ羽を伸ばすいい機会だ。こちらもハワイは楽しみなのでそこはお互い様だ。

 

当日、式は滞りなく終わった。

ハワイの気候と同じくらい、穏やかで温かな気持ちになれる素敵な式だった。

遠いところ悪いなと言う友人を皆でからかい、なんだか学生時代に戻ったようでとても楽しい時間だった。

 

ほとんどの友人達が有給を休日と繋げるように取っていたので、そのままハワイに滞在し、皆で旅行を楽しんだ。

友人の一人がアウラニにあるディズニーリゾートで買い物がしたいというので何人かで車を借りて現地に向かった。

私も同行した。

 

そこはディズニーホテルとプールとビーチが一体となったまさにリゾートと言える場所だった。

ホテル内にあるディズニーショップでハワイ限定のディズニーグッズが買えるらしい。

友人のお目当てもその限定グッズ。

HawaiiやAulaniとプリントされたディズニーグッズを喜々として買い込んでいた。

ホクホク顔で満足気な友人は帰りの車内で如何にこのグッズに価値があるかを語っていた。

コンクリートジャングルの日本であれば、聞くに堪えない内容だっただろう。

しかしここは常夏の島ハワイ。

友人が満足そうで良かった。

ハワイの気候にあてられて同行していた私たちは寛容な精神で友人の熱弁を聞いていた。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎるもので気付づけばハワイから帰る日になっていた。

皆、思い思いに羽を伸ばし、明日からの仕事の英気を充分に養った。

しかしディズニー好きの友人だけ表情が暗い。

どうしたのかと思い、その訳を聞いてみると

「ハワイ限定の衣装のダッフィー人形を買うのを忘れていた」とのことだ。

 

幸い滞在していたホテルからディズニーリゾートまでは近く、ササッと行って帰ってくれば飛行機の時間にも間に合う。

最終日はお土産を買う事を予定していたのだが、既にお土産を買い終えて暇だった私はその友人の希望で同行することにした。

時間に余裕があるとはいえ、空港にはなるべく早くついて搭乗手続きをしておきたい。

友人もそれは分かっているとのことだったのでスムーズに買い物が終わると思っていた。

しかし、ことダッフィー選びにおいてスムーズに買い物ができるという事はないと知っていてほしい。

 

私は初めて知ったのだが、ダッフィー人形は一つ一つ微妙に顔つきや体のニュアンスが違うようだ。

これはパーツごとに流れ作業で作り、最後にそのパーツを組み合わせて仕上げるため全く同じものを作れないという事に起因しているらしい。

 

そもそもダッフィー人形とはミニーマウスがミッキーマウスに送ったぬいぐるみという由来のようだが
「流れ作業で」とかメタな作業内容を言われてしまうとファンタジー感が一気になくなってしまうように私は感じてしまう。

しかしそこは「世界に一つしかない」とか言い替えることによって一気にスペシャル感を演出してくる。

ディズニーの演出力には舌を巻くばかりだ。

 

一つ一つ違うということにより何が起こるかというと、自分のお気に入りの子を見つける工程が発生するということだ。

普通の買い物ではまず無い工程だ。

そもそもダッフィーを選ぶときに何故か皆一様にダッフィー人形に対して「この子」という表現を使う。

「この子は目の位置が可愛い」

とか

「この子の口元がちょっとダメ」とか

その辺の薄ら寒さを当人たちは気付いているのだろうか?

 

私の友人もその例に漏れず、ダッフィー人形を選んでいる。

いや、厳選しているという表現の方がしっくりくるぐらいの入れ込みようだった。

飛行機の時間が迫っているというのに。

 

そしてお決まりの台詞


「この子とこの子どっちがいいかな?」


答えは決まっている


「知らねえ」だ。


しかしダッフィー人形を真剣に選んでいる人間にこんなことを言うと、その人にはまるで私が極悪人かのように写るようだ。

こんなにかわいい子たちを選ぶのにそんな冷酷でいるとか人の心を持っているの?そんな風に思うらしい。

だからなるべく、努めて平静を装ってこう答える

 

「こっちがいいんじゃないかな」

 

そうすると

 

「あーでもこの子(3体目)は全体のバランスが一番いいー」

 

意味も終わりもない労働を強要させられている気分だ。

穴を掘ってその穴を埋める作業をさせられた囚人もこんな気分だったのだろう。

 

時間も迫っているので何故かダッフィー人形を選ぶ理由をこっちが用意することになる。

 

「この子はどう?顔立ちが何となく君に似てない?」なんて言ってみる。

 

「うーん…私、もっと目がぱっちりしてるよ、この子じゃないかなー」

 

私が何らかの武術の達人でない事に感謝した。

鍛え上げた武をためらいなく叩き込んでいただろうから。

どうにかダッフィー人形を選び、飛行機の時間に間に合った。

 

私はディズニーは好きだが、ディズニーに対する温度差に鈍感な人が嫌いだ。

常夏の島ハワイの温暖な気候でも、カバーしきれないものはある。