日本の常識で母をぶん殴る祖母

12月に結婚式を控えている。

先日、招待状を出席者に送り、先週あたりからチラホラと返事がきている。

その中で私の父方の祖母が欠席しますと返事をしてきた。

お盆に祖母に会いに行ったときに私の式の話はしたし、その時は出席するとのことだったので、断りの返事にビックリした。

この3連休中に祖母から私の所に電話があったと母から聞かされた。

私が結婚の報告をしたときに祖母が私に聞けなかった事を母に聞いてきたというのだ。

「お相手の方の学歴は?」

「ご両親は何してるの?」

「ご実家はどのあたりでどんな家に住んでおられるの?」

 

まるで「その辺りの事は母親であるあなたがしっかり管理しなきゃダメでしょ?」と責めているように母は感じられたようだ。

そうだった。私の祖母はこういう人だった。

報告に行ったときにこういうことを聞かれるだろうなと構えていたが、ただおめでとうとだけ言われ肩透かしを食らった気分だった。

祖母は私にはこんなことを聞かないように我慢していたのだろうか。

 

そしてこれは私が祖母に筋を通していなかった所だが、私達は結婚式の前に既に入籍をしているのだ。

これに関して周りの友人も大らかに考えていたし、家族の顔合わせで入籍することを報告したが両家両親から特に何も言われなかったのでそんなものだろうと思っていたが、不義理なことをした。

特に祖母は昔気質な所がある人で私の父と母の結婚の時も結納から式場から招待客まですべて祖母の監修の元、行われたらしい。

祖母は「これが日本の常識よ」という言葉を母に事あるごとに言っていたらしい。

 

昔、父が当時の彼女を家に連れていった時の事だ。

父は前もって彼女を家に連れて帰ることを祖母に伝えていた。

家で彼女の紹介も兼ねて祖母の食事を振る舞うことになったそうだが、

祖母がすごいのは彼女の食器をその日のために用意したことだ。

当日、彼女の紹介を終え、食事もつつがなく終わり、和やかな雰囲気でその日はお開きになったそうだ。

彼女が帰ったのを見届けた後、祖母は彼女が使っていた用意した箸を真っ二つに折って

「あの子はちょっと合わないんじゃない?」と優しく父に言ったようだ。

家族に関することについて祖母はかなり厳しい。

 

招待状には私の苗字と連名で妻の名前が入っており、その横には妻の旧姓を書いたものを送付した。

それを見て「お相手の方の名字が変わっているけど、もう入籍したの?」祖母からこんなこと言われたと母に聞かされた時に冷や汗が出た。

祖母の言う「日本の常識」では考えられない事なのだろう。

欠席するとの返事も筋を通さなかった事への当てつけのようにさえ思えてきた。

 

すぐに祖母に電話をした。

祖母の欠席が残念だと言うことを伝えるために電話するという名目で、
実際は筋を通さなかったことの謝罪をするつもりだった。

入籍について謝罪したが、「わざわざ丁寧にありがとう、でもそんなこといいのよ」と言われ、母に電話したような内容の事を私には言わなかった。

祖母の中では母親にしかこんなことを言う相手がいないのだろう。

 

相手が腹に据えかねていると分かっている状態で、そのことに触れて何も言われないことほど怖いことはない。

ああ、今、発散するんじゃなくて今後に小出しにしていくことにしたのかと考えてしまう。

 

身構えた状態で飛んでくるパンチは痛いが耐えられる。

身構えていない状態でいつパンチが来るかとずっと怯えることは耐えられない。

 

その時、僕に飛ばさなかったパンチは母に飛んでいった。

日本の常識でぶん殴られて心を腫らした母を見ると、祖母が式に出席しなくて良かったと思ってしまう。