うぶでサディスティックな彼女は着付師

12月に結婚式があり、それに向けて準備を進めている。

先日、結婚式の前撮りのためにフォトスタジオに撮影に行った。

 

和装での撮影だった。人生で初めての和装だ。

自分では着られないので着付けもやってもらった。

結論から言うと本当に大変だった。

 

着付けをしてくれるのはフォトスタジオのスタッフの女性の方だった。

これから着付けをしていくので肌着になってくださいと言われたので、上は薄い紳士用の肌着、下はステテコ、そして足袋というルックスになった。

こんな姿を今日会ったばかりの女性に見られるというだけでもかなり恥ずかしい。

 

その日は少し肌寒かったので、恥ずかしながら起立した私の乳首が薄い肌着を通して自らの存在を存分に主張していた。

それはもうどの位置に乳首があるか一目瞭然といった状態だった。

 

その姿の私を見て開口一番、着付けの女性は

「うわーすごい乳首透けてますねー」

と言ってきた。

 

パニックだ。

 

初対面の女性に、しかも客と店員という関係性でこんな心を抉るパンチを放つことが出来るのか?

そして混乱すると人間おかしなことを口走ってしまうものだ。
何か返さなければと思った私は

「どうもありがとうございます」

と言ってしまった。

 

「乳首透けてますね」

に対して

「どうもありがとうございます」

完全に変態のそれである。

しかも敬語というのが変態度に拍車をかけている。

ここはいつからプレイルームになったんだ。

 

その時になって初めて着付けの女性の顔をしっかりと見た。

歳は20代半ば、きりっとした目元に、口元のセクシーなほくろ。

女優の真中瞳を彷彿とさせるような顔立ちだ。

ゴクリ…。

生唾を飲み込む音が個室に響いた。

 

会話の内容は置いておいて、最初からこのように気軽に話しかけてくれたので着付けが終わるまで軽快なトークが続くのかと思ったが、
着付けが始まると表情が一層引き締まった。

プロフェッショナルの顔だ。

 

ここからは着替えさせられるがままだった。

着付けの最中は自分がリカちゃん人形になったような気分だった。

「ここを手で押さえて」

「一歩下がって」

「手を後ろにして」

「腕を通して」

「手を上げて」

指示されるがままに動く私。

その動きに合わせて着付けを進めていく女性。

この流れで

「跪いて私の靴を舐めて」

と言われたら指示に従っていただろう。

大体こういう指示をする時は向こうは敬語じゃないのか?いや私は一向に構わないのだが。

「~してください」という言葉すらも省略し、効率化を図っているのかもしれない。

それかプレイの一環としているのか。

 

そして着付けの最後の工程として袴の紐を結ぶのだが、この時が一番きつかった。

袴の紐は腰と足の付け根辺りでグルッと何周か結ぶのだが、
足の付け根辺りでグルッと結ぶということは、その線上には男性の男性自身がある。

もちろん私にも私の私自身がそこにあるわけなのだが、そんなことはお構いなし。

親の仇のように足の付け根側の紐を締め上げる着付けの女性。

紐が締まる分、当然私自身も締まっていく。

自分がお歳暮のハムになったような気分だった。

 

おそらくこの女性は、男性にはこういうものが付いてることを知らないのではないだろうか?

着付けの道を志し、一心不乱に邁進してきた結果、男女の肉体の違いについて学ぶ暇がなかったのだろう。

「男性の下腹部は、私や他の女性と同じように何も付いていない」

と誤解しているのだろう。

その証拠に、袴の下腹部の紐を最後は前で十字に結ぶのだが、女性の手が紐を結ぶたびに当たる当たる。

しかしそんなことを気にも留めず、綺麗に結びあげていく。

 

着付けのお嬢さん、触られている私は何も言わないがね、そこにはあるのだよ。

 

着付けの女性に乱された心を引きずったままだったので、その後の撮影は散々だった。

「新郎さん、緊張しないで笑顔で」

と言われたが、緊張しているのではない。

これは戸惑っているだけだ。