31歳のおじさんである僕がローランダーになった理由
ホスト界の帝王ローランドを知っているだろうか?
私はつい最近まで全く知らなかった。
もとよりローランドは歌舞伎町のNo.1ホストで私はしがないサラリーマン。
接点など全くなかった。
しかし私は彼を知った。
偶然か、はたまた彼の持つ強力な引力に引き寄せられたからなのか。
最初に彼を見たのは歌舞伎町No.1ホストが自身の成功体験を語る。
ただそれだけのインタビュー動画だった。
哲学を語り、それを支える強烈な個性をまき散らす。
よくあるいけ好かない成金野郎の自慢話だ。
そう思った。
しかし彼を知れば知るほど、そんな印象とは違ったものが見えてくる。
私が着目したのは彼のトークスキルだ。
ホストなのだから話が上手いのは当たり前だろうと思うが、そういうわけではない。
秀逸なのは彼の例え話。
その引出しの多さと取り出す速さに驚いた。
彼の例え話はどんな時だって出てくる。
いくつもの例え話が自然と出るようになるまで洗練していったのだろう。
そうでなければ天性のものか。
普通に話をするより、例え話をすればユーモアと知識と見せることが出来る上に話に説得力を持たせることが出来る。
例えが上手ければ上手いほどその効果は絶大だ。
ホストとして外見だけでなく様々な魅力を見せる必要があると考えた末に、
自己プロデュースのひとつとして例え話を取り入れたのではないかと思う。
もちろん芯を食った例えをしなければ、それにも増して間抜けな様を晒してしまうことになるリスクを抱えているいわば諸刃の剣であるが
彼はその剣を見事に操っているように見える。
実際にローランドが話している場面で例え話はいくつも出てくる。
何となく聞いている分には気づかないほどに自然にだ。
しかしそのことに意識を集中させると実にいくつもの例え話をしている。
そしてそれを聞いて会話に引っ掛かりを感じさせないという事は
彼の例え話を無意識に受け入れてしまっているのだろう。
それほどすんなりと彼の話は入ってくる。
ここではそんなローランドの例え話をいくつか紹介したいと思う。
高級なお肉を食べるシーンで。
「幽霊部員。いたっけみたいな。確実に在籍はしてると思うのよ。(肉を一切れ食べる)え、いた?すぐいなくなる」
肉を一切れ食べて口の中ですぐに溶けてなくなる様を幽霊部員と例える。
誉めているのかどうかも怪しい。
普通なら「とろける」とか「柔らかくておいしい」そんなコメントが出るところだろう。
しかもホストとして喜ばせる客が横にいるわけじゃないただのインタビューという状況ならその程度のコメントで十分なのにこのサービス精神の旺盛さ。
ホストという究極のサービス業で頂点に立った男だからこそできる業である。
「シャンパン入れなかった時のキャバ嬢。席きて、
なんかドリンク頼んでいいですか?
ちょっと今日は給料日前でっていったら、
あ、ちょっとお手洗いにみたいな感じ。売れっ子キャバ嬢か。」
幽霊部員を言ったすぐ後に出てきたのがこれ。
最後に「なんか分かり易過ぎてごめん」とまで言っている。
分かりやすいかどうか判断する前に本人が自信満々に分かりやすいって言ってるんだからそうだろうな。
と相手に考えさせる暇もなく何となく面白かったという印象を与える。
あるホストクラブで売上12位のホストに対して。
「サッカーだったらギリギリスタメン落ちだよ。応援する側よりされる側の方がいいじゃん。12位だったらサポーターじゃん。ピッチ立ちたくない?」
聞いてるだけでやる気が出てくる秀逸な例えだ。
実際、言われたホストはもちろん、ローランドと並んでアドバイスをしていたレジェンドホスト達も頷くほどの説得力。
よくよく考えるとサッカーに例える必要はないんだけど、そう思わせないほど見事な例えだ。
良い人で終わってしまい中々売り上げが伸びないホストに対して
「お化け屋敷とかジェットコースターになれよ。
人っていうのは“怖いもの見たさ”っていうのがあるんだよ。
死にたくないじゃん、皆。死にたくないけどスリルは欲しいんだよ。
優しすぎるだけじゃ刺激が無いんだよね。」
誰よりも人を楽しませてきた彼だからこそ言える人間の性質を鋭くついた話。
No.1になりたいが中々うまくいかないホストに対して
「オリコンチャートとかもそうなんだけどさ“絶対オリコンで1位獲ってやろう”って下心で書いたところで良い詞書けないから絶対。
自分が表現したいモノ、皆に響いたら良いなって、そういう気持ちで作って“あ、気付いたらオリコンで1位獲ってたな”が健全な獲り方だと思う。
打算的に“これやったら1位獲れるかな”とか数字のことばっか考えたって、お客さんつまらないよね、結局。」
No.1にしてもらう、応援してもらうということが当たり前じゃないと戒めるための例え話。
人の心を揺さぶるアーティストと自身のサービス業への心構えの共通点という切り口から展開された話。
自慢の金髪ロングヘアについて聞かれた時に。
「やっぱ手のかかる方が可愛いんだよね。
フェラーリ乗ってる人も、すぐ故障するし、乗りにくいし、高いし、全然国産車の方が維持簡単だしみたいなこと言う人もいるけど
金かかって手間もかかるものって可愛いんだよね。維持大変だし、お金もかかるし、だから可愛い。」
自らの髪をフェラーリに例えて、自らのホストとしての性質もそうであると汲み取れるローランドの価値観が垣間見れる話だ。
先輩にいじられて、弄られキャラが定着しつつあるホストに対して
「お前に男としての魅力がないのって負けに慣れた“負け犬の顔”してるからだと思うよ。
俺が床拭いたのに何で後れて入ってきた先輩方は、汚い靴で俺が拭いた床を汚して帰っていくんだって思ってないだろ?
“人の拭いた床を汚してやる”ぐらいの気持ちでやったらいいんじゃない?」
日本一を目指してないような先輩に媚び売るような奴になったら日本一にはなれないと自ら語るローランドらしさが存分に出たアツい話だ。
他人のために床を綺麗にするだけの人生で良いのかと問いかけ、相談者に発破をかける素晴らしい話。
客にベタづきしているホストに対して
「暇な人だって思われるだろうしプレミア感が本当になくなっちゃうからさ。
暇ってバレるのは論外、割引シール貼り付けてるのと一緒だから。
出荷制限っていうのは絶対大事だしSupremeがなんであんな人気かっていったら在庫抱えてるのに小出しにしてるから。
全部売り切れで、出たらラッキーぐらいで。だから自分の時間にプレミア感をつけるのが大事。」
ホストはサービス業だが、ただマメにサービスしていればいいということじゃない。
自分の時間に付加価値をつけるためにも、大量生産の安売りをするな。
というSupremeを例にとった帝王らしい納得の話だ。
これらの話に対して素直に頷けるのは成功者であるローランドが語るからだ。
彼の持論として「立場が人を作る」というものがある。
売れていないホストの言う「可愛いね」とNo.1が言う「可愛いね」は受け取り方が全然違う。
それと同じで立場が上がっていくにつれて、受け取り手は自然と良いように受け取ってくれるようになる。
今回の話もローランドの実績がなければ、ただ説教クサいだけの話になり下がってしまうだろう。
最後にもう一つだけ。
以前にローランドにアドバイスをもらい、その後、知名度を得たホストが知名度は上がったが売上が上がらないと相談に来た時に
「知ってもらってから、今の売上なんでしょ?手抜いてるんじゃないの?逆に難しいよ。教習車がフェラーリだったらどう?めっちゃ難しくない?それぐらい難しいよ」
???
こういうところもあるからローランドは好感度が高いと思う。
ここまでハマってしまったら彼が何したって好意的に受け止めてしまう。