sumikaのAmberはなんか変

sumikaのAmberという曲を気に入って聴いていた。

 

最初はただメロディが良くて聴いていたのだけど、歌詞を見て違和感があった。

 

あれ?なんかこの曲、変。

 

その爽やかでアップテンポなメロディとは裏腹に歌詞の内容に爽やかさが全くない。

 

歌詞を1番だけ見ると

「なんだ、恋愛経験値の少ないウブな僕が年上の彼女に恋心を打ち明けられない話か」と思ったけどそうじゃない。

 

2番で彼女から別の男の存在を匂わせる煙草の香りがする。

 

それを感じ取るけど、ヘタレな僕は彼女を問い詰めることもできず、

電車で隣のおじさんに煙草の匂いを付けられただけだって自分に言い聞かせてる。

 

 

今までも彼女から別の男の存在を感じ取っていたけど、その度に僕の中の嘘つき猛獣が

上手に自分を騙す言い訳を考えてくれて、それに騙されたふりをして、他の男の存在を見て見ぬふりをしていたけど、

 

さすがに「電車の隣の席のおじさんの煙草の匂いが移る」なんて嘘は苦しいなって自分でも分かってるからこそ

『今日の僕は騙すのが下手だ』と歌詞にも現れている。

 

 

じゃあ結局、僕はただ彼女に片思いしているだけで、

彼女には本命の男がいるだけかというとそうでもなさそう。

 

 

僕と彼女の関係性を類推するヒントとしてサビで出てくるアンバーが機能している。

 

アンバーとは顔料という意味。

 

サビでは僕は彼女が化粧をしているのを見るシーンが描かれているのだけれど、

普通、ただの同僚に化粧している姿を見せるかと疑問に思う。

 

 

世の中には電車の中で化粧できる人もいるみたいだから、同僚に化粧している姿を見せるぐらい何ともないかもしれない。

 

でも多分、僕と彼女は同僚よりももう少し深い関係のように思う。

 

 

それを踏まえて1番の歌詞に戻ると何となく僕と彼女の関係性が見えてくる。

 

 

冒頭では彼女と僕は一緒にいて、彼女は僕のことを覗き込んでいるシーンが描かれている。

 

女性が男性を覗き込むってあまりない表現だと思う。

 

覗き込むって上から見下ろす時に使う表現で、普通身長の高い男性が身長の低い女性を覗き込むことはあっても、逆はあまり無い。

 

じゃあ普通じゃないシチュエーションと考えたら

「寝ている僕のことを覗き込む彼女」だと腑に落ちる。

 

僕と彼女は

「寝ている時に一緒にいる」し

「彼女の化粧している姿を見る(すっぴんも見ているかもしれない)」関係だ。


あと大サビの前の『記憶の中にこんなに僕だけの君がいるのに』辺りからも、

僕しか知らない(であろう)彼女の姿を知っている関係性の深さを類推できる。

 

しかし僕と彼女は付き合ってないことは全体を通してハッキリしているので、

 

僕と彼女の関係性はただの体だけの関係ってことなのだろう。

 

 

曲を通してずっと描かれていたのは

「彼女との関係をスタートさせる思いを告げることが出来ない僕」

ではなく

「彼女との歪な関係性が既に出来てしまっていて、その関係を変える思いを告げることが出来ない僕」というのが

僕の本当の姿なのだろう。

 

 

そう考えると他の所でも色々と興味深いところがある。

 

1番と2番の最初。

1番はsaturdayで始まり

2番はmondayで始まる。

 

土曜日と月曜日。

 

土曜日に僕と彼女は会っていて、彼女は寝ている僕を覗き込んでいて、僕は彼女が化粧をしている姿を見ている。

 

恋人同士だったらそのまま日曜も一緒にいたりするんだろうが一日飛ばして、

 

次に彼女と僕が会うのは月曜日。そして彼女は自分が吸わない煙草の匂いをさせている。

 

日曜日に誰と何をしていたんでしょうね?

 

僕だって見ないふりしてたけど気付いている。

 


僕を覗き込むものを「髪の奥に動く黒」と表現している。

 

普通に「目」でいいのにこんな表現をしている。

 

歌詞の中でもう一つ、「目」を「黒」と表現しているところは

 

「今の関係性を壊したいけど、「黒」を見つめたら言えるはずもない」

 

普通に「黒」を「目」に置き換えても意味は通じる。

「彼女に見つめられたらドキドキして言葉が出てこない」とか。

 

でも「黒」ってそれだけの意味じゃなく「容疑が強い、または悪い事実があること」という意味でも使われる。

 

僕にとって彼女の「黒」はなにかと言えば「僕とは別の男がいること」に他ならない。

 

「別の男がいるって分かっちゃったら、彼女に今の関係を変える思いを伝えるなんて出来るはずもない」とも読み替えられそうだ。

 

 むしろこっちの方の意味を持たせたかったからわざわざ「黒」と表現しているのだろう。

 

 

ここまで考えたら僕の中の嘘つき猛獣もアダルトな意味で取ってしまう。

 

嘘つきな本性でも、嘘つきな小人でもいくらでも他の表現が出来そうなのにわざわざ猛獣。

 

彼女を思い出すたびに胸の少し下が痛いとざわめく」という表現と併せるとよりセクシャルな雰囲気を感じる。

 

普通、心が辛かったら胸が痛いと表現するところをわざわざ「胸の少し下」

 

少しの範囲はどこまでなんだろうね。

胃もありそうだけど、全体の雰囲気で考えたら「もう少し下」のような気がする。

 

ここまでセクシャルなら冒頭の覗き込むというのも、寝ている僕を見下ろすのではなく彼女が上で僕が下の体勢だとまで考えるのは邪推か。

 

 

思いつくままに書いてみたが、何となく筋が通っているような気がする。

考えすぎなところもあるだろうけど。

 

 

一番変なのはこんな内容の歌詞を爽やかなメロディでやっちゃうsumika

 

 

サカナクションの山口一郎曰く「人は違和感に反応する」らしいが、

なるほど見事に反応してしまった。