お見合い相手がストーカー化した話

妻と交際する前の話です。
祖母に勧められて祖母の知り合いのお孫さんとお見合いをさせていただいたことがあります。
お見合いといっても釣書とか仲人とか庭で鹿威しが鳴り響く料亭とか後は若いお二人で的なお固いものではなく

「近所のおばあちゃん同士の話で年頃の孫がフリーだから会わせちゃえ」という感じだったらしく
場所と時間だけ決めて2人でお茶でもしてきなさいというラフなものでした。もはやお見合いというよりもお茶会と呼んだ方が正しいでしょう。


しかもお茶代ということで祖母から1万円いただきました。
お茶代だけで1万円。
「少ないけどこれで相手の分も払ってあげるのよ」と祖母に言われたので
「1万円で足りるか心配だけど、もし足りなかったら自分で払うよ」と祖母には言いながら
内心、余ったお金でウイイレでも買おうと思っていました。

 

祖母とその友人に場所から時間まですべて手配していただきました。
場所は某ホテルのラウンジでした。ラフさはゼロでした。祖母を恨みました。
私はとてもカジュアルな格好なのに対し、相手はドレス。
周りの方たちもスーツやドレッシーな服をお召しになられてました。

 

場所の雰囲気と服装が浮いている焦りから冷静になり、ようやく気づいたのですが

 

相手の人、お母さんが同伴してる。

 

当初の話では二人で会う約束でしたので私の親は同伴しておりません。
私とお見合い相手の人(メグミさん)とお見合い相手のお母さん(メグミ母)の3人でお茶をしてる。
しかも私とメグミ母しか喋っていない。
お見合いというのはこういうものなのか?
如何せん初めての経験なので、この状況が正しいかどうかの判断が付きませんでした。

 

例えば、メグミ母に「仕事は何をされてますか」と聞かれると、私がそれに答え、
その流れで私がメグミさんに「メグミさんはお仕事は何をされているのですか」と聞くとメグミさんは答えずにメグミ母が答える。
他の会話でもすべてこのようなやりとりが続きました。
メグミさんが喋ったのは最初の自己紹介の時の「メグミです」の一言だけ。

後は、メグミ母質問→私回答→私質問→メグミ母回答の繰り返し

 

私のお見合い相手はメグミM母だったか?
そして「お母さんの再婚相手がどんな人か見極めにきました」という感じでメグミさんが同席してるシチュエーションだったか?と錯覚するほどでした。

 

それにしても話を聞いていると
メグミさんの話なのに、とにかく何でもメグミ母が出てくる。
メグミさんの身の回りの世話は全部メグミ母がやっているような状態らしい。
実際にメグミさんがちょっと紅茶をこぼした際もメグミ母が口を拭いてあげて、こぼれた紅茶も拭いていた。

 

このままメグミさんと結婚したら、初夜までメグミ母が同席しそうだな、と思うほどでした。
終わった後は紅茶よろしく、メグミ母が拭くのかなとも思いました。

 

そんなメグミさんもとい、メグミ母とのお見合いも終わりお開きの時間になりました。
いかに高級ホテルといえども、お会計は3人で5,000円ぐらいだろうと思っていました。


1万円貰っているので、5,000円は余るからウイイレは何とか買えそうだなと思い、会計に向かいました。

 

お会計額は約16,000円でした。
約3.2ウイイレです。

 

アフタヌーンティーセットが1人4,500円です
0.9ウイイレです。
サービス料が13%つきますので585円
0.117ウイイレです。
そこに消費税が5%(当時)かかりますので254円
0.0508ウイイレですね。
しめて一人当たり1.0678ウイイレ。3人で3.2034ウイイレですね。
祖母からは2ウイイレしか貰っていないので、1.2034ウイイレの自腹ですね。
ふざけてやがる。

 

ウイイレで換算したらポップになって怒りが収まるかと思いましたが、未だに怒りがこみあげてくる。
一番腹が立つのは会話において、あれほど前に出てきていたメグミ母がお会計の時にはものすごい後ろにいました。
そこだけは古き良き時代の女性を体現しておりました。目すら合わさないなんて淑女の恥じらいも持っておられる。

 

ちなみに帰り道にウイイレは買いました。

 

その後解散し、お見合いのマナーとして断る場合はなるべく早く伝える事が望ましいとのことなので
家に帰ってすぐ、時間にして解散から1時間後くらいに断りの電話をメグミ母に入れました。

 

私「私には過ぎた話ですのでお断りさせていただきたく・・・」
メグミ母「何故ですか?断る理由を具体的に言ってください。」

 

こういうのは向こうも察して
「これからの良縁をお祈りしています」とかで終わるものだと思っていました。

 

私「(メグミ母ばかりが話していたから)メグミさんの事があまりよく分からなかったので、今後のお付き合いのビジョンが見えませんでしたので・・・」

 

メグミ母「じゃあメグミちゃんの事が分かればいいのね。分かったわ。」

 

何か気になる事を言っていましたが、一応断りの旨は伝えたので、これでいいかと思い買ってきたウイイレを精力的にプレイしました。
この満足度でアフタヌーンティーセットとほぼ同額とか信じられなかったです。

 

後日郵便受けを見ると
私宛ての茶封筒が入っていました。
差出人はメグミ母。

 

封筒の中身は手紙が1枚と書類が綴じられたファイル。
手紙はメグミ母からのもので
内容を簡単に説明すると
「先日はどうも。メグミちゃんの事をもっと知りたいと言われたので
メグミちゃんについて書いたわ。これでお付き合いするわよね。」

 

書類の方は
メグミさんのプロフィールが事細かに書かれていました。
身長・体重といった身体的なものから健康状態、趣味、経歴、
果ては結婚・出産といった将来のスケジュールまで。

 

これはマナーを考えている場合ではないのでストレートに断ろうと思いメグミ母に電話しました。

 

メグミ母「送ったものは届いたかしら?あれでメグミちゃんのことは全部分かったわね?」

私「こういったことはやめてください。お付き合いする気はないです。」

メグミ母「何がだめなのかしら?」

私「そもそも本人は私と全く話しをせず、こういった情報だけ一方的に送られて、付き合うことを強要されるのは困ります。」

メグミ母「メグミちゃんの話が聞きたかったのね。分かったわ。」

 

後日、同じような茶封筒がポストに入っていました。
中身はメグミ母からの手紙とUSBメモリー。
手紙の内容は
「メグミちゃんの話を聞きたいって事だからメグミちゃんに色々と話してもらったわ。これでお付き合いするわよね。」

 

USBメモリーをパソコンで読み取ると
音声ファイルが入っていました。
録音されていたのはメグミ母とメグミさんの会話でした。
メグミ母「メグミちゃんお名前は?」
メグミ「はい、私の名前は○○メグミです。」
メグミ母「メグミちゃんの好きな食べ物は?」
メグミ「オムライスです。」
こんな調子の会話が約1時間入っていました。
聞いていられなくて途中で再生を止めました。

恐怖を感じましたが、ここで黙っていてはどんどんエスカレートするだろう。と意を決して電話のリダイアルを押しました。

 

メグミ母「メグミちゃんのお話を聞けてよかったでしょう?」

私「いいかげんにしてください。付き合う気はないと言っているでしょう。」

メグミ母「まだ何か不満なのかしら?」

私「こんなことをして信頼関係を築けると思っているのですか?普通は会って、話をして、そこからお互いを知って、信頼関係が生まれるはずだ。
あなた達のやっていることはただの独りよがりだ!もうやめて欲しい。」

メグミ母「メグミちゃんと会って話したかったのね。分かったわ。」

 

 

後日、家の前には。