仕出し弁当の名前に秘められた商品ネーミング術の極意

私はよく昼に仕出し弁当を購入して食べている。

 

職場がビジネス街にあるため、お昼休みの時間になると、
そこかしこで簡易的な販売スペースが設置され、お弁当が売られている。

 

どれも400円から500円の価格で

「ご飯・主菜・副菜・汁物」がついていて満足度が高いためよく利用している。

しかも主菜・副菜は同じお弁当屋さんでも日替わりで用意されているため飽きることなくほぼ毎日利用させてもらっている。

 

余談だが職場の周囲100m以内にこのようなお弁当屋さんが10軒以上あり、それぞれのお店に特色がある。

ここのお店はヘルシー志向のお弁当とか、あっちのお店は小鉢の品目が多いとかいった具合だ。

 

そして私が「今日の午後はタフな仕事になりそうだな」という時に利用するお弁当屋さんがある。

ここのお店の特色は「とにかく白米がすすむ」をコンセプトにしていて、
「ハンバーグと唐揚げとトンカツがお弁当のおかずで人気なんだから全部入れれば最強のお弁当になるだろ」みたいな馬鹿の考え方をしているお弁当屋さんだ。

こういうの私は大好き。私はここのお弁当をパワフル弁当と呼んでいる。

 

先日も午後からのタフな仕事を乗り切るためにパワフル弁当の力を借りることにした。

しかし行った時間が遅かったのか、残っていたお弁当は一種類だけだった。

仕方なくそのお弁当を買い、会社内でお弁当を開けた時に私は混乱した。

 

「あれ?私は何弁当を買ったんだっけ?」

 

その時買ったお弁当がこちらだ。このお弁当を見て何弁当という名前か考えてほしい。

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お弁当に入っているおかずを列挙すると

・アジフライ

・ハンバー

・唐揚げ

・酢豚

・ひじきの煮もの

・きんぴら蓮根

・漬物

以上7品だ。

 

それにしても惚れ惚れするようなラインナップだ。

漬物以外の6品中4品が主菜を張れる逸材ぞろいだ。

まるで2004年の読売ジャイアンツが作った他球団の4番を集めた史上最強打線のようだ。

本来であれば小松菜の煮浸しが入っていそうな右上のスペースに酢豚が据えられている。

球漫画でよくある「他のチームに入れば即エースといえる奴らですら、ここでは控えメンバーだ」的なやつだ。

 

このラインナップだけ見ると名前はハンバーグ弁当か?とも思うが、メインであろう位置にはアジフライが鎮座している。

おかずの位置を入れ替えて

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こうであれば完全にハンバーグ弁当と言えるが実際はそうではない。難しい所だ。

 

名前の候補として、

筆頭はハンバーグ弁当。

次点でアジフライ弁当。

その次にすべてを包括したミックス弁当辺りが濃厚そうだ。

 

結論を言えばこれはアジフライ弁当だった。

この名付け、特に理由もなく付けたものなのだろうか?

私はそうではないと思う。この弁当は客の満足度を考えた時、「アジフライ弁当」という名前以外に付けるものがない。

 

もしこの弁当が「ハンバーグ弁当」という名前だった場合、買った人の満足度はどうだろうか。

ハンバーグ弁当なのだからメインはハンバーグ。それにプラスアルファ何かが付いてくる。と考える。

このプラスアルファにあたるのが唐揚げ1個とアジフライ1尾。これでは人は満足しない。

ハンバーグにはエビフライが添えられていることがスタンダードだと知っているからだ。

 

しかしこれが「アジフライ弁当」という名前だったらどうだろうか

メインがアジフライで添えられているのがハンバーグと唐揚げ。

おいおいここはエデンか?知らないうちにおかず界の価格破壊が行われていたのか?

そう感じてしまうほどのお得感を演出することが出来る。

 

またこの名付けは心理面でも効果を発揮する。

こんな経験はないだろうか?

 

「顔は有村架純似でスタイルは根本はるみ似の女の子と合コンするから来いよ」

 

こんなこと言われたらすべての予定をキャンセルして行くだろう。

会社の海外出張ぐらいであれば余裕で断ってしまう。

結果どうだ?そんな女の子が来たためしがあったか?3対3の合コンと言われていて6人全員そろっているのに幻の7人目が来ることを諦めきれなかったことはないか?

確かに来てくれた女の子は皆、可愛いしスタイルも悪くなかった。

しかしそんなハードルを上げてしまっては超えられるものも超えられないじゃないか。

 

一方、

 

「まあ普通の子だけど愛嬌があってノリの良い子と合コンするから来いよ」

 

これだったらどうだろう?

すべての予定をキャンセルしていくところまでは同じだが、その後は違う結果になったのではないだろうか?

普通とか言うから期待していなかったけど、可愛い子じゃないか!そしてノリもいいし話していて楽しい!

終始盛り上がってそろそろ解散というところで、さっきまでおちゃらけて話していた子

が急に静かになって

 

「まだ…帰りたくないなぁ」と上目遣いでこっちを見てくる。

 

おいおいここもエデンか?

 

話は脱線したが弁当の内容物は同じなのに付ける名前によって違う印象を与えてしまう。

期待していないというハードルの低さのおかげでハードルを遥かに越えたという満足度を得られることが出来る。

そのような効果を期待してこの弁当の名前は「アジフライ弁当」以外に考えられないのだ。

弁当界に現れた鬼才ここに極まれり。

 

ちなみに汁物としてインスタントのお味噌汁が付いてくるのだが、入れ物がこれなのだ。

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このカップにお湯を注いでこぼれないようにゆっくり運んでいるとどうしても検尿を思い出して食欲が減退する。

弁当界の鬼才もそこまでは予測できなかった。

 

 

 

最強のネーミング

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