ダサいメールアドレスは死を招く

仕事で新規のお客さんが私についた。

黒田さんという方だ。

黒田さんはフリーランスでバリバリと働いている35歳の女性だ。

実際に会って打ち合わせもしたが、派手な感じもなくまさに仕事一筋という感じの女性だった。

 

黒田さんは私の個人的なお客さんからの紹介だったので、自分の個人的な仕事として会社は通さない形で仕事を請け負った。

そうなると必然的に黒田さんと連絡を取るのに会社のメールアドレスではなく、私の個人的なメールアドレスでやり取りをすることになる。

最初の打合せの時に黒田さんにもその旨を説明し、今後の連絡のためにメールアドレスを聞いた。

 

すると黒田さんは「あっ」という顔をした後に一瞬の間があり、気が進まない様子でメモにアドレスを書いて渡してくれた。

 

貰ったアドレスを見るとその訳が分かった。

 

mahoushoujorirkarunanoha-*****@フリーメール

 

魔法少女リリカルなのは!?

あの真面目でバリバリと働く黒田さんが魔法少女リリカルなのは!?

 

動揺を悟られないように努めて平静に「ありがとうございます、では今後の連絡はこちらのアドレスにメールを送りますのでよろしくお願いします。」

と言い、黒田さんとの打ち合わせは終わった。

その後、黒田さんにメールを送る時になって私も「あっ」となった。

 

会社で使用する私のメールアドレスは例えばヤマダコウイチという名前であれば

 

k.yamada@会社のドメイン

 

という感じで当たり障りないアドレスとなっているのだが、今回は個人的な仕事なので会社のアドレスは使えない。

私が普段使っている自分のアドレスでメールを送ることになるのだがここで、はたと私の手が止まった。

 

私が普段使っているアドレスは

 

bloody-joker-k@フリーメール

 

ブラッディ―ジョーカーK。

ブラッディ―なジョーカーのKだ。

この文字を書いている今も汗が止まらない。

Kはもちろん私のイニシャルだ。

自らをブラッディ―ジョーカーだと自称している。

こんなオリジナルネームならリリカルなのはの方がまだマシだ。

 

今日も35歳の魔法少女と31歳のブラッディ―ジョーカーはお互いのアドレスには一切触れずにメールで仕事のやりとりをしている。