医療従事者にだけは逆らうな

ちょっと前になるけど、心臓がおかしくなったことがあった。

僕には持病があるわけじゃないし、その日体調が悪かったわけでもない。

 

普通に道を歩いてたら突然心臓の鼓動が早くなった。

後々、病院に行くことになり知ったのだが

BPMが常に160ほどあったそうだ。

ピンと来ない人のために分かりやすく言うと

全速力で走った時の心臓の鼓動の速さだと思ってもらえればいい。

それが安静にしている状態でも下がらないというのだから大変だ。

 

余談だがあいみょんの「君はロックを聴かない」という曲で
「僕の心臓のBPMは190になったぞ」と歌っているが、

BPM160を経験している僕はこの歌を聞くと複雑な気持ちになる。

 

道を歩いていてと言ったが

実はその日は友人達と飲み会の予定があって、その飲み会に向かうまさにその道中で
その症状が出てしまった。

 

今考えれば恐ろしいことだが

心臓の鼓動が全速力時と同じ速さから戻らないという事は
体に異常をきたしているという事が明らかでありながら、
そこまで苦しくないなという心境だった。

確かに苦しいが我慢できなくもないという絶妙に飲み会に行くかどうか迷えるラインだったのだ。

 

結局、心臓の苦しさより飲み会の楽しさの方が勝ってしまいそのまま飲み会に参加した。

根拠はないけどその内、治るだろうなんて楽観的に考えていたことも参加を決めた大きな要因だった。

 

飲み会中に心臓が収まることはなく、ちょっとずつ怖くなってきたので

早々に飲み会から帰り家で寝ることにした。

 

確かに心臓はおかしいけど寝れば流石に治るだろうと、これまた根拠のない自信のまま布団に入った。

 

寝れない。そりゃそうだ、だって全力疾走してすぐに布団に入って寝れない事が想像に難くないように、

心臓が早く鼓動してて寝れるわけがない。

寝る時ってもっと色々穏やかだろ。

 

長々と書いたがここからが医療従事者に逆らわないと心に決めたエピソードだ。

元々逆らうつもりもないが、医者はまさに患者の命を握っていると思い知ったのだ。

 

寝れないし鼓動が収まる気配がないし何より怖かったので近所の総合病院の夜間救急に掛かった。

 

すぐに先生が来てくれて治療が始まった。

頻脈を抑える簡単な治療を行って、それでダメだったら薬でいきましょうとそういうアプローチだった。

 

簡単な治療は20秒ぐらい息を止めて、呼吸してまた息を止めてという本当に簡単なもの。

この治療では効果がなかったので薬の出番となった。

薬の用意をしながら日常会話のように「はいじゃあ今から心臓止めますからねー」と先生が言った。

今まで「はい息止めてー。…18、19、20。はい息してー」ぐらいの治療法からの落差がエグイ。

「ウッスじゃあ軽く心臓止めちゃってください」なんて返せるわけがない。

心の準備もできていない状態で薬を打たれる。

 

入ってくる薬品がやたら冷たく感じる。

薬品を注入して10秒もしないうちに効果が出てきた。

心臓が次第に止まっていくのだ。

麻酔をしているわけじゃないので意識はハッキリしていて、動かなくなっていく心臓の感覚を嫌でも感じてしまう。

 

こんな時なのに考えていたのはジョジョの奇妙な冒険の第3部でDIOに不意打ちを喰らわせるために心臓の動きをスタープラチナで止めた承太郎のシーンだった。

今でもジョジョのあの場面を読み返すと心臓が痛くなる。

 

っていうか走馬燈とか出ろよ。何もないのか俺の人生の大切な記憶は。

 

一瞬心臓が止まって、その後徐々に鼓動を打ちいつも通りの心臓の動きに戻った。

治ったことに安心したし、先生に感謝したけど
それ以上にこれ死ぬ可能性あったなと思った。

 

単純に薬の量を間違えていたら?

適正な薬の量でも僕に合わなかったら?
先生に悪意があったら?

僕が先生に不快な思いをさせていたら?

もちろんそんなことしないだろうけど、
当たり前だが先生だって人間で、

ギャーギャー攻撃的で憎たらしい患者とおとなしい患者を同じように治療できるのか?

 

心臓を止める薬を仕事として他人に当然に使用することが容認されている人間に盾ついたり逆らうなんて絶対に出来ないなと
このことでそう強く思いましたね。

誤解の無いように言いますが、医療従事者は悪意を持って患者に被害を与えようと思っている人がいるとか

医者と患者の立場の差を利用して威圧的に接してくる人がいると意図して卑屈になって批判しているわけではないです。

当然に医療従事者をリスペクトしようねという意味です。

 

っていうか心臓を止める薬ってなんだよ。打った薬はどこいったんだよ。